「永遠に続くブーム」など投資の世界には存在しません。かつて一世を風靡した人気ファンドたちの現在地を知ることは、相場の本質を見極める最高の教材となります。
こんにちは、Burdonです。
今回は、ほんの少し前まで「最強の投資先」「これからの時代はこれ一択」とメディアやSNSで持て囃されていたものの、最近めっきり名前を聞かなくなった「5つのかつての人気ファンド」の現在地について徹底解説します。
新NISAが始まり、多くの資金が市場に流れ込む中で、投資家たちは常に「最もリターンの高い新しい商品」を探し求めてきました。インド株、FANG+、メガ10、楽天SCHD、そしてゴールド。これらの投資対象はそれぞれが熱狂的なブームを巻き起こしましたが、月日が経った今、その明暗は残酷なまでに分かれています。
本記事では、ただ現在のリターンを比較するだけでなく、「なぜ失速したのか」「なぜ急成長を続けているのか」という経済メカニズムの裏側まで深く掘り下げます。これを読めば、流行に流されない強靭な投資マインドと、長期投資における「真のホールド力」が身につくはずです。
【インド株】人口ボーナスへの過剰期待と「3つの誤算」
2024年の新NISA開始時、最も熱狂的な視線を集めていたのが「インド株」です。「中国の次は間違いなくインドだ」「人口世界一の国に投資しない理由がない」と、多くの投資家がこぞって資金を投じました。事実、インドの人口は14億人を突破して世界1位となり、平均年齢は28歳と若く、実質GDP成長率も7%台を記録するなど、マクロ経済のデータは非の打ち所がないように見えました。
しかし、現在のインド株を代表する「Nifty50インデックス」の成績を見てみると、熱狂からは程遠い現実が待っています。直近1年のリターンはほぼ横ばい、年初来で見れば約マイナス6%という厳しい状況に陥っています。S&P500やオルカン(全世界株式)が堅調に推移している中で、なぜインド株だけが一人負けのような状況になっているのでしょうか。その背景には、投資家が見落としていた「3つの誤算」が存在します。
| インド株失速を引き起こした「3つの誤算」 | 経済的背景と影響 |
|---|---|
| ① バリュエーションの極端な過熱 | 将来の成長期待が先行しすぎた結果、PER(株価収益率)が22〜23倍まで異常に膨張。実体経済の成長以上のスピードで株価が買われすぎ、「割高感」からの利益確定売りが連鎖しました。 |
| ② 投資マネーの「中国への逆流」 | 中国経済の減速からインドへ逃避していた資金が、中国政府の大規模な金融緩和・景気刺激策の発表を機に、再び割安な中国市場へと還流(逆流)する現象が起きました。 |
| ③ 中東情勢の緊迫と「原油高」の直撃 | インドは世界第3位の原油輸入国です。中東の地政学リスクによって原油価格が急騰したことで、輸入コストが増大し、ルピー安・インフレの悪化を招き、経済全体に強烈なブレーキがかかりました。 |
特に③の「原油高」は新興国にとって致命的なダメージとなります。インドのようにエネルギー資源を海外に依存している国は、原油価格が上がるだけで貿易赤字が拡大し、自国通貨が売られやすくなるという脆弱性を抱えています。モディ首相が国民に燃料の節約を呼びかける事態にまで発展したことは、市場に冷や水を浴びせました。
ただし、これで「インド株は完全に終わった」と判断するのは早計です。人口動態のピークは2040年代から2060年代にかけて訪れると予測されており、国家としての根本的な成長ポテンシャルは失われていません。インド株は数ヶ月・数年単位の「短期ブーム」で乗るものではなく、10年・20年という超長期の視点で、乱高下に耐えながら保有し続ける「忍耐力」が試される投資先なのです。
【FANG+】「均等加重」の罠。相場の勝者総取りに乗れなかった最強指数
次に、2024年から2025年にかけて「これだけ買っておけば億り人になれる」とまで言われた「FANG+(ファングプラス)」です。アメリカの巨大ハイテク企業(ビッグテック)10銘柄に集中的に投資するこの指数は、AIブームの波に乗り、年間リターン+76%というとてつもない数値を叩き出しました。しかし現在、その話題性は急速にしぼみ、多くの投資家はS&P500やNASDAQ100へと回帰しています。
直近1年のリターンは+22.67%と決して悪い数字ではありません。しかし問題は、「S&P500やNASDAQ100に負けてしまっている」という事実にあります。最もリスクを取って少数のハイテク株に集中投資しているにもかかわらず、広く分散された指数に劣後してしまう。この現象を引き起こした最大の原因が、FANG+特有の「均等加重(イコールウェイト)の仕組み」です。
通常の株価指数(S&P500など)は「時価総額加重平均」を採用しています。これは、企業の規模(時価総額)が大きくなればなるほど、インデックス内での保有割合を増やす仕組みです。つまり、NVIDIAやMicrosoftのような絶好調の企業が成長すればするほど、その恩恵を最大限に受けることができます。
一方、FANG+は10銘柄に対して「一律10%ずつ」投資する均等加重方式をとっています。四半期に一度のルール(リバランス)において、これが牙を剥きました。
均等加重のリバランスとは、値上がりして比率が10%を超えた「強い銘柄」を強制的に売却し、値下がりして比率が減った「弱い銘柄」を買い増す行為です。つまり、機械的な「逆張り」を行っているのです。
昨今の米国市場は、一部のAI勝ち組企業に資金が極端に集中する「勝者総取り(ウィナー・テイク・オール)」の相場でした。FANG+は、この構造の中で「せっかく爆伸びしているNVIDIAを定期的に売り払い、大きく下落しているNetflixなどを買い支える」という運用を強いられました。結果として、勝ち組企業の恩恵を薄めてしまい、下落銘柄の足を引っ張られる形となり、市場平均に勝てないという皮肉な結果を招いたのです。
【メガ10】忘れ去られた期待の新星。実績不足と投資家の心理
FANG+の弱点である「構成銘柄が固定されていることによる陳腐化リスク」を克服する上位互換として、2025年11月に華々しくデビューしたのが「メガ10(米国グロース株式メガ10インデックスファンド)」です。
このファンドは、米国大型グロース株の中から「その時々で最も成長性の高い10社」を機動的に選定するという特徴を持っています。FANG+には含まれない、イーライリリー(ヘルスケア)やビザ、マスターカード(決済インフラ)といったテクノロジー以外の巨大企業も組み入れることで、守備範囲を広げました。さらに、信託報酬(運用コスト)が0.385%と、FANG+(0.7755%)の約半分という破壊的な安さで設定されたため、設定直後は積立契約ランキングでトップ4に入るほどの異常な人気を見せました。
| ファンドの比較 | FANG+ | メガ10 |
|---|---|---|
| 構成銘柄の選定 | 固定6銘柄 + 変動4銘柄(ハイテク特化) | 全10銘柄が業績に応じて完全変動 |
| 信託報酬(維持費) | 0.7755% | 0.385% |
しかし現在、メガ10の話題を耳にすることは皆無に等しい状態です。設定来のリターンは+11.95%と、運用期間が1年未満であることを考えれば決して悪い成績ではありません。失速の原因は商品の設計ミスではなく、単に「圧倒的な実績(トラックレコード)不足」にあります。
人間の心理として、相場が不安定な時期には「過去に何度もの暴落を乗り越えてきた歴史ある指数(S&P500など)」へと資金を避難させる傾向があります。メガ10は新しいがゆえに、投資家が「このまま持ち続けて大丈夫か」という確信を持てず、流行の終焉とともに忘れ去られてしまったのです。しかし、低コストで優良な10社に分散できる設計自体は優秀であり、数年後に実績が伴ってくれば再び脚光を浴びる可能性を秘めたファンドと言えます。
【楽天SCHD】まさかの急成長。配当と値上がりを両立する伏兵
今回取り上げる5つのファンドの中で、最も「嬉しい誤算」を引き起こしているのが「楽天SCHD(楽天・米国高配当株式ファンド)」です。
2024年9月に登場したこのファンドは、米国で絶大な人気を誇る高配当ETF「SCHD」に手軽に投資できるとして大ヒットしました。一般的に、高配当株ファンドというのは「企業の成熟度が高く、成長余地が少ない代わりに、安定した現金を分配する」という性質を持ちます。そのため投資家たちは、「値上がり益(キャピタルゲイン)はS&P500に劣るだろうが、定期的なお小遣い(インカムゲイン)がもらえるから買おう」という守りのスタンスで投資をしていました。
ところが蓋を開けてみると、直近1年間の基準価額の上昇(値上がり益)だけで+35.67%という、成長株も顔負けの凄まじいリターンを叩き出しました。なんと、ハイテク株が停滞する中で、値上がり益単体でもS&P500を大きく上回ってしまったのです。これに加えて、分配金もしっかりと増配(直近で90円)を記録しています。
安定した配当を受け取りながら、値上がり益でも市場平均を凌駕する。楽天SCHDは、現在の米国市場における「バリュー株(割安株)への資金シフト」の恩恵を最も受けている、真の優等生と言えます。
【ゴールド】歴史的高騰からの急落。金利上昇に勝てない安全資産
最後に、2025年に異常な高騰を見せた「ゴールド(金)」です。中東情勢の悪化や米国の財政不安、そして各国の「ドル離れ」による中央銀行の猛烈な金買いを背景に、ゴールドは「安全資産」としての地位を確立し、年間で+60%を超える異次元の急騰を見せました。
しかし現在、その熱狂は完全に冷め、年初来でマイナス4.82%、ピーク時からは約23%もの大幅な下落(調整)に見舞われています。安全資産であるはずのゴールドがなぜこれほど売られているのか。その最大の理由は「米国の長期金利の上昇」にあります。
投資の世界には明確な力学が存在します。ゴールドという資産は、株式のように企業の利益によって成長することもなければ、債券のように持っているだけで利息(インカム)を生むこともありません。「ただ光り輝く石」であるゴールドは、金利が上昇する局面では極端に弱くなります。なぜなら、投資家からすれば「安全な米国債を持っていれば高い利息がノーリスクでもらえるのに、わざわざ利息を生まない金を持っておく意味がない」と判断されるからです。
| ゴールドと金利の「逆相関」メカニズム | 投資家の資金動向 |
|---|---|
| 市中金利が【低下】する局面 | 銀行預金や債券の魅力が減るため、インフレに強い「実物資産」であるゴールドに資金が殺到し、価格が高騰する。 |
| 市中金利が【上昇】する局面 | 債券を持っているだけで高い利息が得られるため、利息を生まないゴールドから資金が抜け、価格が下落する。 |
米国債の利回りが上昇に転じたことで、ゴールドの相対的な魅力が剥落し、投機的な資金が一気に引き上げられました。とはいえ、ゴールドの本来の役割は「株式が暴落した時のクッション(分散投資)」です。メインの投資先として一喜一憂するのではなく、資産全体の5〜10%程度を保有する保険として機能させるのが正しい付き合い方です。
投資の鉄則:「ブーム」で買い、「飽き」で売る愚行を避ける
ここまで5つの人気ファンドの現在地を見てきました。期待外れに終わっているものもあれば、想定以上の結果を出しているものもあります。ここで私たちが学ぶべき最も重要な教訓は、「話題だから買う、話題が消えた(直近の成績が悪い)から売る」という短期的な感情トレードは、資産形成において最悪の選択であるということです。
SNSの流行に振り回される「イナゴ投資家」になってはいけません。大切なのは、最初にそのファンドを買った時の「目的(成長ストーリー)」が崩れていないかを確認することです。
インドの長期的な人口増加に期待して買ったのであれば、数年間の原油高による停滞で売るべきではありません。米国のビッグテック企業が未来を創ると信じたのであれば、FANG+の短期的な劣後で手放すべきではありません。投資とは、自分が信じた経済の成長シナリオに資金を投じ、その結果が出るまで数年、数十年という単位で「じっと待つ」という極めて退屈な作業なのです。
どんなに優れた投資信託であっても、永遠に右肩上がりで市場を圧倒し続けることは不可能です。相場には必ずサイクルがあり、それぞれの資産が主役になるタイミングは循環します。他人のノイズに耳を塞ぎ、自分自身の投資目的に立ち返り、ブレない長期投資を貫いていきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。






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